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労働審判「口外禁止」は違法。地裁判断だが、今後に影響の可能性 

2020年12月8日日本経済新聞朝刊に、次の記事。

記事タイトル:労働審判で口外禁止は違法
記事本文:「雇い止めを巡る労働審判の内容を口外しないよう労働審判委員会に命じられ、精神的苦痛を受けたとして、長崎県大村市の男性(59)が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、口外禁止条項を付けたのは違法と長崎地裁が判断した。原告代理人の弁護士が8日までに明らかにした。判決は1日付。(中略)
原告男性は長崎県庁で記者会見し「調停で裁判官から『禁止条項は一般的なことだから』と言われた。お世話になった人に報告もできないというのは受け入れられなかった」と話した。

判決で古川大吾裁判長は「将来にわたって口外禁止条項の義務を負い続けることからすれば、原告に過大な負担を強いるものと言わざるを得ない」と指摘。「原告が条項を受容する可能性はなく、相当性を欠いている」として違法性を認定した。
一方、労働審判委が口外禁止条項を盛り込んだのは「早期解決の道を探るためで、審判に違法または不当な目的があったとはいえない」として賠償請求は認めなかった。

判決などによると、男性は運転手として運送会社に有期雇用で勤務していた2017年3月、雇い止めにされた。その後、地位確認などを求めて長崎地裁に労働審判を申し立て、労働審判委は口外禁止条項を盛り込むことを条件に、会社側が解決金230万円を支払う調停を打診。男性は拒否したが、同条項入りの審判が言い渡された。〔共同〕」
2020年12月8日日本経済新聞朝刊記事から」


〔編注、コメント〕
 地裁判断だが、今後の労働審判に影響を与える可能性がありそうだ。



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元勤務先企業を避け元上司・元同僚を攻めるレファレンスチェック 

2020.8.8日本経済新聞朝刊につぎのような記事が掲載されていました。

◎記事見出し: 「中途採用で「前職調査」企業向けサービス広がる 法抵触避け個人から情報」
◎記事本文: 
中途採用時に、応募者の性格や前職での振る舞いを調べるレファレンスチェックが、新進企業中心に広がっている。調査会社が接触する相手は応募者の元上司や元同僚。だが手法が不適切だと、調査協力者や応募者に負担を強いる恐れがある。転職市場が広がるなか、再チャレンジを妨げる可能性もある
「昨秋開始のレファレンスサービスは絶好調。実施数は約5000件になる」。バックチェックの名で前職調査を提供するROXX(東京・港)の中嶋汰朗社長は話す。(中略)
 調査はネットで完結する。利用企業は応募者に「同意」を取り、同社は応募者が名前を挙げた前職の上司・同僚・部下にメールで質問を送る。回答はアルゴリズムで解析し(1)応募者の思考の特徴(2)採用後考えられるリスク(3)次の面接で聞く質問ーを利用企業に戻す。「ストレス耐性やチームワークに問題がある」「論理的で効率優先、設定した目的に向け一直線」。同社が企業向けに作った調査サンプルにはこんな文言が並ぶ。(中略)

提供者にリスク
(中略)
 職業安定法は指針などで求職者の個人情報について、出生地や家族の職業、人生観や労働組合への参加など収集を原則禁じる項目を例示。2005年全面施行の個人情報保護法23条は、前職場が持つ人事考課や勤怠記録などのデータを本人の同意なしで開示することを禁じ、野放図な調査を制限した。
(中略)
・・「調査会社が情報を前職関係の個人に求めるのは、個人情報保護法への抵触を恐れる元勤務先から情報収集ができないためだろう」と指摘する。だが、応募者が指名した元上司や同僚は、知らないうちにリスクを負いかねない。退職者の情報は基本的に職場で知ったもの。就業規則で社内情報の漏洩を幅広く禁じている企業もある。
 民法上の不法行為責任も無視できない。元同僚の病歴など重大な個人情報を伝えた場合だ
。(中略)

同意拒否できず
調査は応募者にとっても負担が大きい。
「嫌だったが、同意せざるを得なかった」。調査を受けた40代男性は振り返る。企業の採用責任者は「レファレンス自体を拒否されたら選考を中止する」と認める。応募者は同意するしかないのが実情だ。この問題に詳しい田村優介弁護士は「求職者には事情があるもの。日本のレファレンスチェックは彼らの不利益が大きい」と指摘する。」
(以下、省略)。」(以上は、2020.8.8日本経済新聞朝刊から編者の責任で抜粋紹介させて戴いたものです。)


[編注、コメント]

 現在、採用活動の過程で前職調査、リファレンスチェックを行っている応募先企業は少数だろう。記事の中で職業安定法の指針などにおける求職者の個人情報の取り扱われ方についても適切に要約紹介されているように、応募者の以前の勤務先企業から応募者の個人情報を取得することは、事実上困難になっているはずである。
 そこで登場しているのが、以前の企業ではなく、応募者をよく知る上司や同僚から情報収集を行い、意見をもらうというものです。しかし、記事にも触れられているように、ここには(法的には)、より深刻な個人情報漏洩問題が潜在しています。
 本人が同意しているなら「可」だろうと安易に調査会社の求めに応じることは、かなりリスクを伴う行為でもあります。しかし現状、この種のリスクの存在が元上司や元同僚の間に認識されているとは思えないところに、問題がありそうだ。

参考
現状の法的指針等をまとめたもの
(厚労省指針)
 企業が応募者の個人情報を集める場合は、「本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する」と定めている。また、一定範囲の個人情報(出生地、思想信仰、労組への加入有無等)は、収集自体が禁止されている。
 厚労省は、転職活動における採用選考は応募者の適性・能力のみを基準として行う必要があるとする。しかし、就職活動においては、①応募先企業から前職調査に関する同意書へのサインを求められることもないとは言えないが、この場合でも、以前の勤務先が第三者(応募先企業)に退職理由、勤務態度などを本人の同意なく開示することは、個人情報保護法に違反する。



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GMOの飲食店給与前払い支援サービス 

GMOの
飲食店給与前払い支援サービス



1 GMOインターネットグループは飲食店などの従業員が期日前に給与を受け取れるサービスを始める。金融機関と連携し、企業がまとまった資金を用意しなくても、従業員がすぐ前払いを受けられる。外国人向けに中国語、ベトナム語にも対応し、人手不足に悩む店に利用を呼びかける。
(中略)
2 店舗の勤怠システムと連携し、利用者は働いた分だけ前払いを申請できる。前払いの資金はGMOあおぞらネット銀行が担い、利用者が専用アプリで申請すると、即座に本人の口座に振り込む仕組み。前払い額の6%と210円が、利用料などとして引かれる。店舗は後日、前払いした金額を同行に振り込む
(中略)
3 事前に給料の受け取りを希望する人は多く、給与前払いが可能な店はアルバイトの応募が増えるなどメリットがある。同社のサービスは使いやすく店側の負担が少ない点が特徴といい、GMOグループのネットワークを使って売り込む。(2020.6.22日経新聞朝刊記事から)


[編注、コメント]

法的問題点
1 従業員や、利用企業への前払金の立替えが貸付に該当するか(貸金業法違反。この場合、従業員が払う手数料が利息と認定されるが、手数料が1.7%だと年換算で法定上限利息の20%を上回わる(利息制限法違反))

これに対して、
2018年12月に金融庁から貸付にあたらないとする見解が示されたところです。

https://www.fsa.go.jp/policy/kyousouryokukyouka/grayzone/02.pdf


(理由)

  貸金業法の目的は、貸金業を営む者の業務の適切な運営の確保、資金需要者の利益の保護であり、仮に契約形態が委任契約であっても、実質的に「貸付け」行為に該当し、貸金業に該当すると整理すべき場合もあるが、
(ア) 本サービスは従業員の勤怠実績に応じた賃金相当額を上限とした給与支払日までの極めて短期間の給与の前払いの立替えであって、
(イ) 導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えを行っているものではなく、
(ウ) 手数料についても導入企業の信用力によらず一定に決められている
との前提の下では、導入企業又は従業員に対する信用供与とは言えず、また、導入企業においても、信用供与を期待しているとまでは言えないことから、貸金業法上の「貸付け」行為に該当せず、貸金業に該当しないものと考えられる。

  ・ただし、照会者の行為が、従業員又は導入企業に対して、導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えとなっている、又は手数料については導入企業の信用力によらず一定ではないなど、上記前提と相違し、実質的には貸付けを行っていると認められる場合には、導入企業又は従業員に対する金銭の貸付けに該当し、貸金業法第2条第1項に規定する貸金業に該当する可能性が高いと考えられる。

以上、現時点では貸金業法等への違反は成立しないと判断されています。



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「給料ファクタリング」で集団提訴 契約無効求める 

「給料ファクタリング」
で集団提訴


 以下は2020.5.13日本経済新聞朝刊記事から
(記事の概要)
 給料をもらう権利を業者に売り、前借りのような形で支払いを受ける「給料ファクタリング」の実態は貸金で、不当に高い手数料(※ 手数料の多くは金利に換算すると年率300%前後に上る。)に基づく契約は無効として、利用者9人が13日、東京都内の業者に計約436万円の返還などを求めて東京地裁に訴えを起こした。
 給料ファクタリングは利用者が勤務先から受け取る予定の給料を債権として業者が買い、手数料を差し引いた金額を利用者に提供する仕組み。利用者は後日、業者側に給料分を支払う。(以下略)


[編注・コメント]

給与ファクタリングとは
(1) 利用者が将来勤務先から受け取る給料を債権とみなして業者に売却。
(2) 業者は利用者に手数料を差し引いた現金を渡す。
(3) 法律上、給料は勤務先から雇用者に直接支払わねばならないため、業者は勤務先からではなく、利用者から給料を回収する。
 給与ファクタリングは、多くの業者が“給料の前借りサービス”などとうたって客を集めている。

 金融庁は今年3月、「給与ファクタリングは貸し付けと同等の機能で、受け取る手数料も実質的な利息に当たり、年利換算すれば法定金利の10倍以上になり違法な貸金業だ」とする見解を示している。



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日本のアニメ制作現場の実態 

 なかなかアニメ制作の実態はわからないことが多い。
 労働条件の面から見ると、これが、日本でも有数のフラックらしい。
 ここでは、最近、日本経済新聞で取り上げられたアニメ制作の実態に関する記事の中から、日本のアニメータや制作会社が置かれた実態について記述された部分を紹介します。

 (箇条書き等は編集の便宜上つけさせたいただきました。)


1 2019年の調査では、日本で正社員として働くアニメーターは14%にとどまる。大規模な一部の制作会社を除き、半数以上が委託契約のフリーランスだ。(2020.3.25日本経済新聞朝刊記事から)

2 日本には260社弱の制作会社があるとされるが、帝国データバンクによると、赤字のアニメ制作会社の割合は18年に3割を超えた。過去10年で最高で、倒産や解散も過去最多だった。ある制作会社の幹部は「請負単価は減り続け、人手不足で業況を拡大できない悪循環。1人でも抜けると仕事を受注できず赤字になる会社が多い」と話す。乏しい経営環境は業界の成長力をそいでしまう。原画を担当する都内の40代男性は「オフィスが無いので自宅で作画して、社員の人が車で回収に来る。孤独だし生活できずに辞める人も多い」と話す。「昔より精緻な絵が求められ手間がかかるのに、1枚数百円なのは変わらない」と嘆く。(2020.3.25日本経済新聞朝刊記事から)

3 制作委員会
日本アニメの制作は、製作時に複数から資金を募る「制作委員会」方式が多い。
契約は作品ごとになされる。利益は広告代理店、テレビ局、出版社、玩具会社などが出資する制作委員会のものとなり、作品がヒットしてもアニメ制作の制作会社には還元されない。



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