「二重雇用」下での営業秘密の漏洩事件 

「営業秘密持ち出し容疑元役員逮捕 IT技術者引き抜き?」
2018.3.9日本経済新聞記事

表記の見出しで「役員かつ、営業秘密の作成者による営業秘密の漏洩事件」が報じられていた。この事件は、二重雇用下における営業秘密の漏洩という問題もあわせ有している。本事件は民事裁判にもなっていることから、さらに、事件の詳細を知る機会が有るかもしれない。下記は、日本経済新聞記事。

出所:2018.3.9付け日本経済新聞朝刊記事から
記事タイトル:営業秘密持ち出し容疑元役員逮捕 IT技術者引き抜き?


記事本文:「ITコンサルティング大手のフューチャーアーキテクト(東京)から従業員名簿などの営業秘密を不正に持ち出したとして、警視庁生活経済課は8日までに、同社元執行役員の岸本昌平容疑者(39)=東京都渋谷区渋谷1=を不正競争防止法違反容疑で逮捕した。同課によると「自分で作った資料なので営業秘密とは思わなかった」と容疑を否認している。
同課によると、岸本容疑者は2016年12月から17年5月まで、競合会社で東証マザーズ上場のベイカレント・コンサルティング(東京)とも雇用契約を結び、営業秘密を同社に漏洩した疑いがある
逮捕容疑は17年1~2月、自宅のパソコンからフューチャーアーキテクトのサーバーに接続し、営業秘密である顧客向け金融システムの提案書や従業員名簿を不正に得たほか、顧客向け見積書をベイカレント社の社員にメールで送信した疑い。
名簿にはシステムエンジニアやプログラマーなど技術者約100人の専門分野と役職が記載されていた。16年12月以降、フューチャーアーキテクトからベイカレント社には技術者約30人が移籍していた


ベイカレント社は取材に「名語などを持ち出すよう指示したことはない」と話している。同課は今後、同社側からも事情を聴く。
提案書と見積書には金融システムの仕組みの詳細が示され、外部に漏れれば技術が盗用される恐れがあった。
同課によると、岸本容疑者はベイカレント社との雇用契約について「報酬アップのためヘッドハンティングに応じた」と話している。
フューチャーアーキテクトが二重の雇用状態を把握し、17年4月に警視庁に被害を相談した。岸本容疑者は5月に同社を解雇され、ベイカレント社も自主退職した。
フューチャーアーキテクトは東証1部上場のフューチャーの子会社。」


[編注、コメント]

 この事件は、2017.8月に営業秘密の不正使用を理由に、フューチャーがベイカレントに対して民事訴訟を提起している。
 前記記事は同一事案の刑事事件経緯。
 本件は、営業秘密の不正利用事件だが、当事者が「①役員かつ、営業秘密の作成者による漏洩事件であること、②二重雇用(許可された副業・兼業ではない)による秘密漏洩であることなどに特徴がある。
 二重雇用下での営業秘密の漏洩は、仮に、許可された副業・兼業である場合はさらに複雑な問題が派生する可能性もある。



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製造業の直接雇用が派遣労働に置き換わっている実態 

製造業の雇用
(直接雇用と派遣労働)



2018.1.13付日本経済新聞 朝刊記事から

記事タイトル:「製造業、派遣料大幅上げ 車・半導体で2割程度 期間工の法改正や好況… 人材不足に拍車」

 「製造業派遣の派遣料金が大幅に上がっている。(中略)
 製造現場の人手不足は解消する手立てが見えない。派遣のニーズは高まる一方で、料金引き上げは派遣社員の待遇にも反映されてきた。(中略)
 高まるラインの人手を派遣従業員で賄っている。自動車のほか電子部品や半導体でこうした動きが顕著になっている。(中略)
 派遣社員の引き合いに拍車をかけているのが有期雇用の期間工を巡る「2018年問題」だ。13年施行の改正労働契約法で、5年を超えて働いた非正規社員は18年4月から本人の希望に応じて無期雇用への転換を申し入れできるようになった。無期雇用の製造工を自社で多く抱えると固定費が膨らむ。このため派遣会社が無期雇用する派遣社員の活用に目を向ける企業が増えた。こうした背景から「派遣シフトが急速に進んでいる」(製造業派遣会社社長)。今後、工場が5年を前に契約を更新しない雇い止めが増える可能性もある。(以下省略)」(2018.1.13付日本経済新聞朝刊記事より)


[編注、コメント]

 ここのところの人手不足で、製造業派遣の派遣料金が大幅に上がっているという記事である。
 確かに派遣料金の引き上げは、その一部が派遣労働者の賃上げに回される仕組みではあるが、問題は、「無期雇用の製造工を自社で多く抱えると固定費が膨らむ。このため派遣会社が無期雇用する派遣社員の活用に目を向ける(製造業の)企業が増えた。こうした背景から「派遣シフトが急速に進んでいる」」という実態である。このような形で、製造業の直接雇用が労働者派遣に置き換えられており、今後、さらにそれが浸透、定着してゆく実態には、注意が必要である。
 この問題は、製造業派遣の是非が議論されたときの大きな論点でもあっただけに、制度のあり方を含め、再度議論が必要になるかも知れない。



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給料「前借り」急拡大 

気になる新聞記事


元記事情報
(2017.10.25日本経済新聞朝刊記事から)
記事の大旨以下のとおり。
記事見出し:
給料「前借り」急拡大、人材確保へ企業が相次ぎ導入、一部は「脱法」貸金?ルール必要 。「数年で20社に、年利219%も」

記事本文:「給料日前に、働いた分の給料を受け取れるサービスを提供する業者が急増している。(中略)事業モデルは業者によって大きく2つ。
 1つは企業が一定額をプールして従業員の申し込みごとに現金を引き出す方式。利用回数などに応じ、企業が業者に手数料を支払う。
 1つは業者が従業員への支払いを立て替え、企業が事後精算する。
 グレーなのは後者だ


 立て替え払い式の業者の多くは、現金を引き出す際に従業員から3~6%程度の「システム利用料」を徴収している。このことに「利息を引いて給料日まで金を貸すのと同じ」との指摘も出る。例えば給料日10日前に現金を引き出した場合、6%のシステム利用料を利息とみなせば年利換算で219%。貸金業なら出資法の上限金利(20%)の約11倍もの高金利だ。給料から天引きする形で企業が精算するため、貸し倒れリスクも低い。

 業者の多くは「前借りでなく前払い。福利厚生サービスの一つ」などとして貸金業登録をしていないが、多重債務問題に詳しい三上理弁護士は「脱法的な高利貸しにみえる業者もいる」とみる。
 労働基準法に触れる恐れもある。同法では、中間搾取を防ぐため賃金は雇用者が直接、一括払いするよう定める。厚生労働省は「立て替えは原則違法。導入企業が処罰対象になりうる」という。

 業者側は「顧問弁護士の助言を受けており問題ない」などと主張。
 金融庁は「貸付に当たるかは実態で判断する。様々な業者があり一概に合法か違法かは判断できず、現状把握が必要」とする。」
以上。


 [編注、コメント]

 少々、気になる記事だった。

 労働基準法違反がかなり明白な事例。
 この件については、取締行政機関のうち、金融庁が「貸付ー違法金利」の面から実体判断がいるとするのはまだ、解る。
 しかし、問題は厚生労働省の方だ。
 厚生労働省は「立て替えは原則違法。導入企業が処罰対象になりうる」という。違法金利問題とは別に、労基法違反での摘発が可能だろう。
 厚生労働省は、この種問題(新聞記事で報道され、違法性が高いが、被害労働者からの訴えはまだない事案など)への対応(反応)が鈍いのではないか。



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