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資料 平成29年6月5日労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について(建議)」 

資料 
平成29年6月5日労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について(建議)」


労審発第921号
平成29年6月5日
厚生労働大臣 塩崎恭久殿
労働政策審議会 会長 樋口美雄
時間外労働の上限規制等について(建議)
 本審議会は、標記について検討を行った結果、下記のとおりの結論に達したので、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、建議する。

別紙労働条件分科会の報告のとおり


別紙
平成29年6月5日
労働政策審議会 会長 樋口美雄殿
労働条件分科会 分科会長 荒木尚志
時間外労働の上限規制等について(報告)
 本分科会は、標記について別紙のとおり報告を取りまとめたので、厚生労働大臣に建議すべきである。


時間外労働の上限規制等について(報告)

 時間外労働の上限規制等については、「働き方改革実行計画」(平成 29 年3月 28 日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会において、同年4月7日以降5回にわたり検討を行い、精力的に議論を深めてきたところである。
 人口減少社会を迎えた我が国において、経済の再生、「成長と分配の好循環」を実現するためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と併せ、労働参加率の向上を図る必要があり、そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる一億総活躍社会を実現することが必要である。
 ところが、我が国の労働時間の状況をみると、この 20 年間で、一般労働者の年間総実労働時間が 2000 時間を上回る水準で推移し、雇用者のうち週労働時間 60 時間以上の者の割合は低下傾向にあるものの 7.7%と平成 32 年時点の政労使目標である5%を上回っており、特に 30 歳代男性では 14.7%となっている。また、平成 27 年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は 251 件(うち死亡の決定件数は 96 件)、精神障害による労災支給決定件数は472 件(うち未遂を含む自殺の決定件数は 93 件)となっている。
 長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。「過労死等ゼロ」を実現するとともに、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため、長時間労働の是正は喫緊の課題である。
 このような考え方に基づき、当分科会において検討を行った結果は、下記のとおりである。
 この報告を受けて、厚生労働省において、スピード感を持って、時間外労働の上限規制等に関する労働基準法等の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当である。併せて、すべての労働者が、健康とワーク・ライフ・バランスを確保しながら働き続けられるよう、国、地方公共団体、使用者、労働組合等のすべての関係者には、取引条件の改善、企業文化の見直しや労働時間の適正な把握を含め、引き続き不断の努力が求められる。
 なお、働き方改革の実現に向けては、改革の基本的な考え方と進め方を示し、そのモメンタムを絶やすことなく、長期的かつ継続的に取組を進めていくことが必要である。このため、「働き方改革実行計画」を踏まえ、改革全般にわたり、法制面も含め、その目的達成のための政策手段について、引き続き検討を行っていくことが求められる。



1 時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制については、以下の法制度の整備を行うことが適当である。
(1) 上限規制の基本的枠組み
現行の時間外限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるとともに、従来、上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することが適当である。
・ 時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間とすることが適当である。かつ、この上限に対する違反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。また、一年単位の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下
同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月 42 時間、かつ、年 320 時間とすることが適当である。
・ 上記を原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年 720 時間と規定することが適当である。かつ、年 720 時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、
① 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で 80 時間以内
② 休日労働を含み、単月で 100 時間未満
③ 原則である月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回まで
とすることが適当である。なお、原則である月 45 時間の上限には休日労働を含まないことから、①及び②については、特例を活用しない月においても適用されるものとすることが適当である。
・ 現行の 36 協定は、省令により「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」は時間外限度基準告示で「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」としなければならないと定められている。今回、月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)、かつ、年 360 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 320 時間)の原則的上限を法定す
る趣旨を踏まえ、「1日を超える一定の期間」は「1か月及び1年間」に限ることとし、その旨省令に規定することが適当である。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化することが適当である。


(2) 現行の適用除外等の取扱い
現行の時間外限度基準告示では、①自動車の運転の業務、②工作物の建設等の事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの、が適用除外とされている。
これらの事業・業務については、健康確保に十分配慮しながら、働く人の視点に立って働き方改革を進める方向性を共有したうえで、実態を踏まえて、以下のとおりの取扱いとすることが適当である。
① 自動車の運転業務
・ 自動車の運転業務については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、年 960 時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、5年後の施行に向けて、荷主を含めた関係者で構成する協議会で労働時間の短縮策を検討するなど、長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進することが適当である。
・ この場合でも、時間外労働の上限は原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間であることに鑑み、これに近づける努力が重要である。
② 建設事業
・ 建設事業については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当である。ただし、復旧・復興の場合については、単月で 100 時間未満、2か月ないし6か月の平均で 80 時間以内の条件は適用しないが、併せて、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当である。また、5年後の施行に向けて、発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置するなど、必要な環境整備を進めるとともに、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進することが適当である。
・ この場合でも、時間外労働の上限は原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間であることに鑑み、これに近づける努力が重要である。
③ 新技術、新商品等の研究開発の業務
・ 新技術、新商品等の研究開発の業務については、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務の特殊性が存在する。このため、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とすることが適当である。
・ その際、当該業務に従事する労働者の健康確保措置として、1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり 100 時間を超えた者に対し、医師による面接指導の実施を労働安全衛生法上義務づけることが適当である。
この面接指導の確実な履行を確保する観点から、上記の義務違反に対しては罰則を課すことが適当である。
また、上記の面接指導の結果を踏まえた健康を保持するために必要な事後措置の実施を労働安全衛生法上義務づけるとともに、当該事後措置の内容に代替休暇の付与を位置づけることが適当である。
④ 厚生労働省労働基準局長が指定する業務
・ 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するものについては、原則として罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当であるが、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについては、その猶予について更に検討することが適当である。
⑤ 医師
・ 医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法第 19 条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることが適当である。


(3) 労働基準法に基づく新たな指針
・ 可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設け、当該指針の内容を周知徹底するとともに、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにすることが適当である。
・ 当該指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨を規定するとともに、併せて、休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない旨を規定することが適当である。
・ また、36 協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置づけたうえで、当該健康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当である。その内容は、企画業務型裁量労働制対象者に講ずる健康確保措置として労働基準法第 38 条の4の規定に基づく指針に列挙された内容(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を基本として、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等を追加することが適当である。
・ さらに、現行の時間外限度基準告示には、①限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金率を定めるに当たっては、法定の割増率を超える率とするように努めなければならないこと、②労働時間を延長する必要のある業務区分を細分化することが規定されており、これらは指針に改めて規定することが適当である。


2 勤務間インターバル
勤務間インターバルについては、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、その普及促進を図る必要がある。
このため、労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である。その上で、平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、同法に基づく指針に、労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を追加することが適当である。


3 長時間労働に対する健康確保措置
過重な労働により脳・心臓疾患等の発症のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、労働者の健康管理を強化することが適当である。
(1) 医師による面接指導
・ このため、長時間労働に対する健康確保措置として、労働安全衛生法第 66 条の8の面接指導について、現行では、1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり 100 時間を超えた者から申出があった場合に義務となっているが、この時間数を定めている省令を改正し、1か月当たり 80 時間超とすることが適当である。
(2) 労働時間の客観的な把握
・ また、上記の面接指導(1(2)③の面接指導を含む。)の適切な実施を図るため、平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、管理監督者を含む、すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当である。その際、客観的な方法その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが適当である。


4 その他
(1) 法施行までの準備期間の確保
・ 中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備時間を確保することが必要である。また、施行に向けて、できるだけ早期に制度の細則を確定させ、その周知徹底を図ることが必要である。その上で、施行期日については、事業運営や労務管理が年度単位で行われることが一般的であることを考慮し、年度の初日からとすることが適当であり、この点を踏まえ、具体的な期日を検討すべきである。

(2) 上限規制の履行確保の徹底
罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するに当たっては、その実効性を一層確保する観点から、履行確保のための以下の事項についても、併せて措置することが適当である。
① 過半数代表者
・ 過半数代表者の選出をめぐる課題を踏まえ、平成 27 年2月 13 日の当分科会報告にあるように、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たるなど通達の内容を労働基準法施行規則に規定することが適当である。また、監督指導等により通達の内容に沿った運用を徹底することが適当である。
・ 同分科会報告にあるように、使用者は、過半数代表者がその業務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を、規則に規定する方向で検討することが適当である。
・ 労働基準関係法令が十分周知されていないことに伴う法令違反が依然として多数みられることから、時間外・休日労働には36協定の締結及び届出が必要であることや、協定の締結当事者である過半数代表者は法令等に基づき適正に選出される必要があること等について、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。また、使用者は、36協定等を労働者に周知させなければならないとしている法の規定を踏まえ対応するよう、徹底を図ることが適当である。

② 労働基準監督機関の体制整備
・ 時間外労働の上限規制の導入の前提として、36 協定の締結及び届出を行うことなく時間外・休日労働を行わせている使用者に対する監督指導の徹底が強く求められる。このため、企業単位での監督指導の強化、地方運輸機関等の関係機関との連携強化等を図りつつ、労働基準監督官の定員確保など労働基準監督機関の体制整備に努めることが適当である。

③ 電子申請の促進
・ 36協定の届出をはじめとする行政手続の簡素化・効率化を進めるためにも、電子申請利用率を向上させる必要がある。このため、電子申請を行う場合にはすべからく事業主の電子署名を必要としている現行の取組のうち、社会保険労務士の電子署名による代理申請に際しては、事業主の電子署名については委任状の添付等により省略できることについて、省令の改正を行う方向で検討を継続することが適当である。

以 上



労務安全情報センター
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